【書評】カラフル/森絵都

森絵都さんは大人向け(しかもけっこう強めの大人向け)と10代向けの小説を書くのですが、これは10代向けの方になります。が、大人になって読んでも面白いです。初めて読んだときは10代で、その時も心に響いたのですが、改めてアラサーになって読み直してもやっぱり面白いし、やっぱり心に響くものがあります。名作とはこのようなもののことを言うのだと思います。

簡単にあらすじを紹介します。
物語は死後の世界ではじまります。もはや主人公は魂だけになっていて、前世の記憶すらありません。
すると、主人公はその世界の天使からこんなことを言われます。「あなたは大きな過ちを犯して死んだ、罪な魂です。通常ならば輪廻のサイクルから外されることになります。(中略) しかし、ときどき抽選であたった魂にだけ再挑戦のチャンスを与えているのです。」
その再挑戦とは、現世の人間の身体を借りて(作中では"ホームステイ"と呼ばれる)、前世で犯した過ちの大きさを自覚すること。
"ホームステイ"先の身体は今し方自殺したばかりの中学生「小林真」。友達もいない、家庭環境も滅茶苦茶、さらに顔もイマイチで身長も小さい。それは自殺もするわと主人公が同情するなか、真としての生活が始まります。

あらすじだけみると児童文学のような感じがします。また、本文はコメディ調で進んでいきますので、読んでいて暗い気持ちになることもなく読むことが出来ます。
しかし、真の抱えている問題はかなりシビアです。そのシビアな問題にひとつずつ主人公は真としてぶつかっていきます。ぶつかって痛みを伴いながら、その先を知って行くにつれて、最低最悪だと思っていた世界の本当の輪郭線が、次第に見えてきます。


「この世があまりにもカラフルだから、僕らはいつも迷ってる。どれがほんとの色だかわからなくて。どれが自分の色だかわからなくて。」
この一節はこの世界の本質な気がしました。みんな色んな色を持っていて、それがお互いに影響し合っている。そして、それは自分の心の持ちようで変えられるのです。

主人公がどんなに頑張っても真はもう死んでいます。ホームステイが終わると真の身体も死んでしまうのです。「もう何をするにしても遅すぎるんだ」当時、何をするにも閉塞感を感じていた私は、この一節に小さな救いを見ました。こうやって開き直れば、何でもできるような気がしてきました。そして、その伏線を回収するような、色んな方がレビューに上げている「真、早まりすぎたよ、すべてが遅すぎるわけじゃないおまえが早まりすぎたんだ」で、本当に自分は今から何をしてもいいんだという気持ちになれました。

ストーリーもテンポ良く展開し、ページをめくる間一切飽きません。ラストの屋上のシーンは何度読んでも胸が熱くなります。(勘のいい人には分かったのかもしれませんが、私はあのオチは予想できませんでした)

今の人生に不満や閉塞感を感じている人は、ぜひこの本を読んで改めて世界を見回してみてください。

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